自民党のデジタル社会推進本部は、AI(人工知能)の安全性確保と活用促進に関する緊急提言をまとめました。この提言は、国内のAI開発企業に対して、政府が策定予定の新しいAIガイドラインの遵守を促す新法の検討を中心に据えています。欧米で進行中のAIに対する法規制を考慮し、日本国内での対応を迫っていることが明らかにされています。
2023年12月14日に発表されたこの文書は、日本政府がAI政策を進める上での重要な指針を示しています。主な内容は以下の通りです:
国内ガイドラインの活用促進:
広島 AI プロセスに基づく国際行動指針・行動規範を踏まえ、日本国内の AI 関連事業者向けガイドラインを策定し、各分野や業種ごとの AI 活用課題と対処法を明確にする。また、ガイドラインの遵守を法制化することを検討。
AI 安全研究所の創設:
安全保障、サイバーセキュリティ、AI 技術の専門家が参加する府省横断的な AI 安全研究所を設立。米英の AI 安全研究所との連携を強化し、AI の基準・規格の策定、安全性調査・研究、AI ガバナンス人材の育成を進める。
必要な予算の確保と AI の安全性に関する技術開発:
リスク対応、利用促進、開発力強化などに必要な予算の確保。AI とサイバーセキュリティ、偽情報対策など、AI の安全性に関連する技術開発を強化。
AI 戦略推進体制の拡充:
「AI戦略チーム」、「AI国際戦略推進チーム」の省庁間連携を維持しつつ、これらのチームに専従職員を配置し、体制を強化。
AI の安全性確保と活用促進に関する緊急提言全文
AI の安全性確保と活用促進に関する緊急提言
令和 5 年 12 月 14 日
自由民主党デジタル社会推進本部
デジタル社会推進本部において、AI の進化と実装に関するプロジェクトチームが本年 4 月に策
定した「AI ホワイトペーパー~AI 新時代における日本の国家戦略~」等をきっかけに、政府におけ
る AI 政策の検討は加速し、岸田文雄首相による「G7 広島 AI プロセス」の提唱、「AI 戦略会議」の
創設、「AI 戦略チーム」と「AI 国際戦略推進チーム」の設置など様々な取組みがスタートした。
G7 広島 AI プロセスは、信頼できる AI のための議論を日本が議長国として主導し、今月初旬に
G7 首脳から行動指針・行動規範が公表された。国内では、5 月に AI 戦略会議が「暫定的な論点
整理」をとりまとめ、中央省庁における生成 AI 利用に関する統一的な方針の申合せ、初等中等教
育段階における生成 AI 利用に関するガイドラインの策定などが行われ、AI と著作権や知的財産
権に関する議論なども進んでいる。そして、広島 AI プロセスを踏まえ、国内事業者向けのガイドラ
インも検討されている。
これらの政府による迅速な取組みは高く評価したい。一方で、世界はルールメーキングの次を
見ている。AI の安全性の確保に向けて、安全保障、サイバーセキュリティも含む幅広い関係者を
巻き込み、より具体的な検討が始まっている。英国でのAI サミットの開催、米英の AI 安全研究所
の設立、英米はじめ 18 ヶ国の政府機関による「セキュア AI システム開発ガイドライン」の策定、
「AI の安心、安全で信頼できる開発と利用に関する米国大統領令」などは、その表れであろう。
この提言では、特に AI の安全性に関して、政府が緊急に取り組むべきことを記す。
なお、日本の AI 開発力の強化、AI の利用促進等に関しては、あらためて提言を予定している。
1.国内ガイドラインの活用促進
広島 AI プロセス国際行動指針・行動規範を踏まえ、国内の AI 関連事業者向けのガイドライン
を策定すること。
その際、プログラミングの様に仕事の仕方が大きく変わる分野があることも踏まえ、各分野・業
種における AI 活用の課題・対処方法をそれぞれ明らかにすることにより、AI の社会実装・活用の
加速に資するものとすること。
更に、当該ガイドライン遵守の履行確保のため、法制化に向けて検討を進めること。
2.AI 安全研究所の創設
安全保障、サイバーセキュリティ、AI 技術など幅広い専門家が参画する府省横断的な AI 安全
研究所を早急に創設すること。
同研究所と米英の AI 安全研究所等との連携を強化し、AI に関する基準・規格等の策定、AI の
安全性に関する調査・研究、AI ガバナンスを担う人材の育成などを進めること。
3.必要な予算の確保と AI の安全性に関する技術開発
リスク対応、利用促進、開発力強化等のために必要な予算の確保に努めること。
AI とサイバーセキュリティ、偽情報対策など、AI の安全性に関する技術開発を強化すること。
4.AI 戦略推進体制の拡充
「AI戦略チーム」、「AI国際戦略推進チーム」は、関係省庁の担当者がチーム員を兼務している
が、今後増加が予想されるAI関連の業務に対応するため、これらのチームによる省庁間連携は
維持しつつ、事務局に専従職員を配置するなど、早急に体制を強化すること。
以上